「女扱いされて嬉しかったのもある。自分でも馬鹿だと思う。
ただ、自分がきつい時に一緒に頑張ってくれたことが嬉しかった。」
嫁はやっぱり俺の前では泣かなかった。
どこまで話していいのか迷ってる感じはちょっとした。
「嫁のことがすきだって言ったの?その男。既婚者だって知っててくどいてきたの?」
スペックにへこんだ俺は少し語気を荒げた。
ごめんね。俺のろくなっちゃうから、やっぱり報告先に書くね。
嫁いわく、好きだとは言われたが本気ではないと思う。
二人で飲むと礼儀のように女をくどくタイプだ。
あくまで私が浮かれただけ。私が馬鹿だった、と。
でも話をよくよく聞いたら その仕事の打ち合わせだなんだと称してしょっちゅう嫁を呼び出すし、
飲みに誘われたのも一度だけじゃないらしい。
嫁が男をかばっている風なのに腹が立ってきた。
「俺のこと、好きってずっと言ってくれてたのはなんだったわけ?」
「浮かれてる間も毎日すきすきいってくれてたんだよね。
これから、嫁がすきっていっても信じられないよ。
何で、恋愛相談をAちゃんにしながら俺にすきとか言えるの?」
結局責めてしまった。
嫁は歯を食いしばって泣くのをこらえてた。
ふだんちょっとしたことで感動して泣くくせに、とにかくふーふー言ってしばらく無言。
しゃべりだそうとしてまたこらえて、の繰り返し。
「あなたのことが好きだから結婚したし、ずっと好きでいたかった。
結婚しても、あなたのお父さんみたいに私のことを30年先にものろけてくれるような、
そんな夫婦でいたかった。だから好かれたくていろいろやってきたんです。」
ああ、過去形だ。と思った。
「あの人のことが気になり始めたときに、厄介なことになったと思った。
自分でぶち壊すことになるんじゃないかって思った。だから、仕事やめて
関係を切り捨てるか、1回やって収まりつけられたらいいって思った。」
嫁は秋口から冗談めかして転職か、いったん会社を辞めて子作りしたい、という話を口にしていた。
今の仕事は残業も多いし、将来的に子供がほしいなら
卵子がまだ若い今のうちに作ったほうが良いと思う。
ただ、俺は正直、嫁さんの今の会社での評価や給料のよさを思うと
そこまで極端に走らんでいいんじゃないの。と思ってた。
「一回やって」はひどいけど、ただ嫁が冗談めかした言葉の裏には
こういう事情があったんだな、とは思った。
俺は嫁と会う前に決めてたことがある。
どういう最悪の答えが返ってきても、俺の気持ちはちゃんと言おう。
結果が別れることになっても、俺はたぶん嫁の思いに応えるだけじゃなく
自分が嫁に対して思ってることを伝えたいと思った。
「本当は今日、嫁が俺のことをどう思ってるのか聞きたいと思ってたんだけど。
それより前にまず俺が伝えなきゃいけないと思って。」
「俺は別れたくないです。」
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